てけとー 日記

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徹底調査 生乳(牛乳・乳製品)の値段高騰の要因

明治、森永乳業、グリコ、雪印メグミルクで2019年4月出荷分から牛乳・乳製品の値上げ発表

明治

明治は,牛乳やヨーグルトなどの乳製品を中心とした計111商品を、2019年4月1日出荷分から値上げすると発表した。乳製品の生産コストが上昇していることから、出荷価格や希望小売価格(税別)を1.5%~4.7%引き上げる。

商品例 「明治 おいしい牛乳」、「明治 ブルガリアヨーグルト」、プロテインの「ザバスミルクプロテイン」等

 森永乳業

森永乳業はヨーグルトや飲料など35品目を3.0%〜8.3%、牛乳類10品目を3.0%〜7.0%値上げする。

生乳の買取価格を4月から引き上げることで生産者団体と合意、そのほか人件費や物流費、包装資材などの価格が上昇していることから製品価格を引き上げることを決めた。

 商品例 「森永 おいしい牛乳」「まきばの空」「ビヒダスヨーグルト」「森永 アロエヨーグルト」 等

 グリコ

28品目メーカー出荷価格並びに希望小売価格を改定する。

「グリコ牛乳」など牛乳・乳飲料は3.3~6.3%、「Bifix ヨーグルト ほんのり甘い加糖」などヨーグルト3.1~4.4%、「プッチンプリン」などプリン5.3~7.5%値上げする。

原材料価格や物流コストが軒並み上昇する中、経営の合理化や効率化により、コストの吸収を図ってきたが、その吸収が極めて困難な状況に達しており、価格改定する。

 雪印メグミルク

雪印メグミルクは6日、牛乳やヨーグルトなど計79品を、2019年4月1日出荷分から値上げすると発表した。出荷価格や希望小売価格を1・7~6・1%引き上げる。

商品例「雪印 メグミルク牛乳」「ナチュレ 恵」

 

牛乳に使う生乳の価格(飲用乳価)が4年ぶりの値上げで決着した。上げ幅は1キロ4円。

関東生乳販売農業協同組合連合会などが明治など大手乳業と合意したことが一因にある。

 

値上げに応じなければ国産の牛乳や乳製品が生産できなくなりかねない状況である。

生乳生産費用があがった理由は後に説明をする。

 

また、日本製紙が2019年4月から1Lの牛乳パックの値段を7%値上げを発表している。

 

そのため、各メーカが牛乳・乳製品におよそ10円の値上げを発表した。

 

消費者に牛乳・乳製品が届けられるまでに

牧場で生乳を生産→タンクローリーで牧場で生乳を受け取り、指定生乳生産者団体(農協)で生乳の成分の品質検査→牛乳工場(乳業メーカ)で加熱殺菌、牛乳パックに充填作業、段ボールに梱包がされる。

 

1.牧場で生乳生産費用の値上げ原因と2.牛乳工場(乳業メーカ)で値上げ原因に分けて説明する。

 

1.牧場で生乳生産費用の値上げ原因

生乳生産費用が上った理由を牛乳生産にかかる費用の構成から説明する。

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上の図にあるように、酪農家が牛乳生産にかかる費用の4-5割が飼料を占めている。

飼料と労働費を合わせると6割弱に達する。

 

飼料と労働費が大きく生乳生産費用の値上げに起因する。

 

 

乳牛の基本情報、牛の酪農業の仕事を説明後、人件費、飼料費に分類して要因を説明する。

乳牛の基本情報


しっぽ振り振り ホルスタイン種の牛 千葉市動物公園2014年12月14日 00225

畜産と酪農とでは少し意味が違う。

畜産とは牛,馬,羊,豚,うさぎ,鶏などの家畜,家禽を飼育,増殖させて,肉,卵,乳などの畜産食品物を生産したり,皮革,毛などを得る業。牛に関しては特に酪農と呼ぶ。(引用元 ブリタニカ百科事典)

酪農とは、牛や山羊などを飼育し、乳や乳製品を生産する畜産をいう。(引用元 wikipedia)

 

日本の畜産で飼われる牛は白黒模様のホルスタイン種の牛が主要(99%)。

特徴:大人の牛で体重650kg、生産乳量 5000~10000kg/年 乳脂肪分3、5%

生産乳量が多い→牛乳に使われる。

初出産は2歳で体重550kg前後、1日に20kg~30kg弱の乳が出る。

出産後280日~300日毎日搾乳する。

50日目~110日目が最もたくさん乳が出る。

乳量に合わせて、タンパク質を多く含む配合飼料(とうもろこし、大豆、脱脂粉乳などデンプンやタンパク質含量が粗飼料より高い濃厚飼料を混ぜ合わせた餌)の量を調節する必要がある。

量次第で太ったり、やせるため管理が重要となる。

 

乳量は暑さによって変わる。

ホルスタイン種は高温多湿な環境に弱い。

酪農業といえば北海道である。

夏は平均気温が20度前後、最高温度は30度を超える日もある。

山地だから30℃まではいかないが牛には苦しい。

 

ホルスタリン種の乳を出す最適な温度は4℃~23℃前後と言われている。

夏になると乳量が20%も減ることがある。

夏バテなのか、牛がエサを食べる量が減ることや、暑い環境に順応してホルモン分泌や代謝が変化することが考えられている。

牛乳で商売をしている酪農家にとっては重大な問題である。

乳量が減る以外にも、乳脂肪、ミネラル(カルシウムなど)、タンパク質が減る。

 

牛乳・乳製品およびこれらを主要原料とする食品について、その成分規格や表示の要領、製造方法の基準などについて定めた食品衛生法に基づく「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」がある。

そこに牛乳は乳脂肪分3,0%以上、乳固形分8.0%以上とある。

 

万が一3,0%を下回った際は、牛乳として販売できないことになる。

 

話を元に戻すと、

出産後40日~60日経ったら、次の種付けをする。

280日~300日経つと搾乳を止め、次の分娩に備えて60日-90日休む。

1年に1回分娩のペース。

2歳に初出産をして、3-4回出産を繰り返し、5-6年を寿命とする。

 

 

広大な国土がない日本にはホルスタイン種が生産乳量が良いため、広く飼われている。

 牛の酪農業の仕事内容

1日の酪農業の仕事はというと

 


(5) 牛を育てる【農業とわたしたちのくらし】

AM4:00~AM5:00に起床

AM6:00 牛舎掃除

糞尿、汚れた敷き藁(牛の寝床に敷くもの。稲ワラやオガクズ、モミガラなど)をきれいにする。

大人の600kgの乳牛で1日に30kgの飼料(粗飼料:青草、干し草、稲わら+濃厚飼料)を食べる。

そんなに食べる牛だから糞尿の量もモリモリである。

1頭の乳牛は大人のメス牛げ20-30kgの糞、10-20kgの尿をする。

大量+臭い。

農機具を運転して、掃除できるようになったが朝から大変な仕事だ。

AM7:00-AM8:00 餌やり


乳牛 自動給餌機

自動給餌機は何十頭~何百頭分の飼料を配る。

牛が食べ過ぎないように量を調節、食べる量から体調管理もする必要がある。

AM8:00~AM 9:00 朝食・小休憩

AM9:00~AM10:00 搾乳 

酪農家として独立して1-3年目は40-50頭を家族で経営する人が多い。

40-50頭を2-3人でミルカーで1日に朝夕で2回搾乳をする。

 

AM10:00~PM4:00 畑作業(デントコーンなど飼料つくり、牧草の刈り取り)、サイレージ作り、人工授精、哺乳など

 

 

 


【弟子屈町】デントコーン収穫風景 NEWHOLLAND FR850

 

春から夏にかけて、畑作業も加わり大変になる。

 牧草地や飼料畑(45ha/一戸)で飼料作りも酪農家には欠かせません。春、秋には牧草地に肥料を与え、トラクタで収穫した牧草はサイレージにして保存する。収穫後に畑を耕し、夏にはトウモロコシ類を栽培して、これらの作業だけでも年間約600時間を費やす。

 

出産のときは昼夜を問わず看護をします。無事に子牛が生まれた直後は、ぬれた体をふいたり、初乳を飲ませたりと、母親のように面倒を見てあげることが必要です。

 

PM4:00~PM5:00  餌やり・翌日の朝飼料作り

PM5:00~PM6:00 搾乳

PM6:00~PM8:00 牛舎掃除・敷き藁

 

人件費

労働力不足

畜産の現場は労働力不足が深刻である。

 

生乳生産量の全国の半分以上を占めている北海道では酪農や畜産などに従事する養畜作業員の有効求人倍率(2017年)は4,7.全国で2,8を記録している。

有効求職者数に対する有効求人数を比率を有効求人倍率が示している。

正社員はもちろんのこと、パートタイマーに高い時給で募集をかけても集まらない。

 

2014年1戸あたり平均乳牛頭数75頭である。

 

稲作や畑作に比べて、毎月換金でき、気候にあまり左右されずに安定収入が得られるなどから50年前は1世帯に2~3頭飼う農家が多かった。

日本の経済成長に伴い農村部から都市部へ多くの若者たちが移り、後継者不足をきたす中で、農業全体が合理化や集約・大型化へ向かい、酪農も同じ道を辿った。

 

酪農家の労働は、乳牛の生理と一体化して進めざるを得ない。
24 時間・365 日体制で定休日は存在しない。そのため、家族経営がベースになる。

約80%が常勤雇用者がいない。

 

飼養頭数40-50の酪農家は1頭当たり約121時間の労働。年間4800-6000弱時間牛の世話をする。

酪農家の約 85%が非法人 で、約 80%の酪農家で常勤雇用者が0人である。

ほぼ家族経営で酪農を運営している。

家族経営(旦那さんと奥さん)2人の場合、1人2500時間から3000時間、仮に365日間1日も休まなかった場合でも平均7-8時間働くことになる。

 

 

朝5時に起きて、冬は凍える寒さの中で仕事をする。

牛糞の清掃を毎日行い、春~秋は畑仕事がある。

 

1年間1日も休まず、7-8時間毎日働くのは想像を絶する過酷さであろう。

上で説明した通り、重労働でもある。

(酪農ヘルパーという派遣で清掃や餌やりをしてくれるため、正確には1年間全く休んでないわけではない)

 

労働力が不足しているため、労働費を上げざるを得ない状況である。

 

飼料費

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資料:生産局畜産部飼料課「流通飼料価格等実態調査」

 

乳牛の餌である配合飼料の値段が高騰している。

というのも、配合飼料は輸入に頼っているためである。

 

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配合・混合飼料の原料飼料量 資料:農林水産省より

 

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近年の飼料自給率の推移 (飼料をめぐる情勢 生産曲畜産部飼料課 農林水産省

 

 

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粗飼料と濃厚飼料の割合(TDNベース) 農林水産省データより

H29年(概算)のデータによると、近年の飼料自給率は粗飼料は78%を占めるのに対し、濃厚飼料は13%。

  

その濃厚飼料の13%しか国内で生産されていないのが実情である。

 

配合飼料(濃厚飼料を配合した飼料)の配合割合5割をとうもろこしが占めている。

とうもろこしは普段、食卓に並ぶスイートコーンよりも大きいデント種(デントコーン)とフリント種(フリントコーン)である。

日本国内のとうもろこし消費量は2016年の1年間で約1,530万トン、そのうちの約1,200万トンが飼料用に輸入されている。 

資料:USDA「World Agricultural Supply and Demand Estimates Report (WASDE)

 

飼料メーカーが自由な競争の下で、飼料穀物の国際相場、海上運賃(フレート)や為替レート等の動向を反映して設定。

膨大な量を輸入しているため、とうもろこしの値段が変動すると牛乳の値段にも大きく影響する。

平成18年秋以降の配合飼料価格は、主原料であるとうもろこしの国際価格(シカゴ相場)がアメリカで燃料用エタノール生産向け需要の増加により上昇した。

 

ブラジルから輸入量を増やし、輸入量のが25%近くまで伸びており、少し安定した。

 

しかし、配合飼料の価格は昔と比べて、依然として高い。

 

 

オルテック社(マーク・ライオンズ社長兼CEO)の「オルテック世界飼料調査2019」(144か国、約3万か所の飼料工場を対象に調査)の結果によると

2018年の世界の飼料生産量は前年比3%増の11億300万トンであったとある。

世界全体からみて、飼料生産量は増加している。

 

今後も安定して、ブラジルから配合飼料を輸入できるとは限らない。

・人口とミドルクラスの増加は今後も進んでいく。 

ブラジルが国内の牛肉、豚肉、特に鶏肉の消費量が増えている。

ブラジルの低所得者層の所得水準があがっている

・ブラジルがアメリカに燃料用エタノールの輸出量の増加が起きると飼料の値段が上りかねない。

 

他にも飼料の値段は海上運賃、為替も影響を受ける。

海上運賃が発展途上国の船腹需要の増加により値段も上がりつつある。

・円安が進むと飼料の値段が上る。

 

輸入に頼る現状では、値段が上ることは避けられないと考えられる。

 

対策として、飼料用米の生産、エコフィードなどに取り組んでいる。

飼料用コメはとうもろこしとほぼ同様の栄養価があり、養豚場、養鶏場で飼料として利用されている。

エコフィードとは食料品店で余剰として残ったパンや麺類、おからなどで一定水準を超えた食料品を飼料として再利用することである。肉用牛、養豚場で利用されている。

 

今後どれだけの成果が出るかはわからないが、対策をとる必要があるのも当然である。 

 

 2.牛乳工場(乳業メーカ)の値上げ原因

物流費

 僕たち消費者に届くまでには、まず、牧場→指定生乳生産者団体(農協)→牛乳工場(乳業メーカ)という流れで牛乳が運ばれる。

冷却機付き配送車で配送センターに運ばれたり、牛乳販売店を経由してスーパーマーケットの店頭に並んだりして消費者に運ばれる。

 

この長い経路の移動で輸送費用がかかる。

輸送費の原価構造で多くを占めるものは一般的に「運転者人件費」40-50%、軽油などの「燃料油脂費」の10%-15%、その他に車両費7%前後などである。

 

運転者人件費、燃料油脂費が大きく値上げに影響する。

 

運転者人件費

2018年厚生労働省「職業安定業務統計」によると職業全体の有効求人倍率は1.61倍、トラックドライバーなど含む「自動車運転手」の有効求人倍率は3.26倍(2017年3.09倍)であった。

ドライバーの労働需給が逼迫している。

 少し仕事の種類は異なるが身近なところでいうと、トラックドライバー不足によって引越し需要が集中する3、4月に希望通り転居できない「引越し難民」も問題となっている。

 

 トラックは全産業と比較して低賃金・長時間労働である。

国土交通省のデータによると、全産業平均と比較して大型トラック運転手は1割、中小型トラック運転手で2割の賃金が低い。

・労働時間は1.2倍長い。

20代の労働者は10%を満たさず、30代と合わせても約3割。

40-50代が45%を占める。

今後、高齢ドライバーの退職が加わると、さらに問題が深刻化する。

よって、労働環境(賃金・労働時間)を改善する必要がある。

 

自動運転が可能になれば、この問題は解決される。

しかし、車体が大きいトラックの運転自動化は重大事故防止の観点から乗用車より高度な制御システムが必要となる。

乗用車の運転自動化も2030年に可能かもわからない。

しばらくの間は、労働環境改善のために賃金をあげたりし、牛乳の値段高騰につながりかねないと考えたほうが良い。

 

燃焼油脂費

トラック、タンクローリーともに軽油を燃料にして、走っている。

軽油、ガソリン価格は主要原産国(OPEC、ロシア)の減産に伴う原油需給の引き締まりなどに伴い2016年以降上昇基調にある。

 

これは現状、国際的な問題でもあるため輸送費の高騰は避けられない。

 

日本製紙が2019年4月から1Lの牛乳パックの値段を7%値上げ

牛乳の90%以上が紙パックを利用して販売されている。

牛乳パック1枚の値段はわずかなものかもしれないが、牛乳の値段高騰に影響を与えている。